昨年初めて、光がんざき亭を光市民ホールで、奈々福・松之丞二人会を開催したしました。明治150年にちなむ公演でした。
光がんざき亭其の23 玉川奈々福・神田松之丞二人会 お礼 - 光がんざき亭
同じ顔ぶれで見たい聴きたいというリクエストを多数いだたいておりました。ホール側からも、年に一度はがんざき亭と共催で演芸公演をやりましょうということになりましたので、それなら、ぜひ二人会再演をと、約1年前から計画しました。
公演3か月前の6月8日土曜日、チケット販売を開始することにしました。テレビや新聞等、メディア露出が盛んになった松之丞さんと奈々福さん。特に松之丞さんの人気高騰ぶりには目を見張るものがあります。
そして迎えたチケット発売当日。お手伝いで光市民ホールに来てみれば、すでに購入希望のお客様の列が!
あれよあれよとチケットが売れていきます。私の携帯も電話は鳴り、メールは入り、枚数を把握するのが追いつきません。そして、ついに、午後には完売!
昨年約100日をかけて公演前日に完売札止めになったのですが、今年は一日で完売。ということは、お二人の人気は100倍に!?
チケットをゲットされたお客様から、「これから3か月後を楽しみに毎日を過ごします」といわれ、うれしい一方、気を引き締めて準備しなくてはと思ったのでした。
昨年はテーマに沿った演目を主催者側がお願いしての公演だったので、今年はお二人には存分にその話芸の魅力を発揮してもらおうと、演目についてはお任せし、2席ずつ口演をお願いして、順番も打ち合わせしておきました。
講談で使う高座と、浪曲の演台は違います。まず、講談は小さな机の「釈台」を据えて座布団に座って演じられます。一方の浪曲は立って演じます。「テーブル掛け」と呼ばれる布を掛けた演台と、湯のみを置く「湯のみ台」を脇に配置します。三味線を弾く曲師が座る椅子もあります。
今回は「奈々福 松之丞 お仲入り 松之丞 奈々福」の出順を計画。
前半と後半1席は講談の高座、後半もう1席は浪曲の演台を設えることにしました。入れ換えは約5分で行うことに。
また、昨年の反省を踏まえて、駐車場係など人員配置なども万全に計画していました。
昨年と違って今年は指定席だから、混乱もないでしょう。準備着々、余裕すら感じていました。
そして9月。いよいよと気持ちも高ぶっていたところ、「台風13号が発生しましたね、それるといいですね」と平生町のカラフル亭主催者ミズタさんからメッセージが。ここにきて、そんな心配をしないといけないのか?と心配していたら、進路予想は影響がなさそうなルート。ほっとしました。
しかし、事態は公演当日の朝、奈々福さんからのメールから急展開したのでした。
いつの間にか台風15号が発生していて、関東地方へ接近中。その影響で、東海道新幹線の最終列車が繰りあげられる可能性があるとのこと。
詳細確認していると、再び奈々福さんからメール。帰りは途中まで移動することにして宿泊先も確保したと連絡が入りました。あとは松之丞さんに連絡のみ。
出演をお願いしたときから、当日中に帰京したい旨は伺っていたので、その日のうちに帰れる方法を調べました。
光市へ向かうべく、すでに新幹線の中の松之丞さんとメールでやり取り。そう、講談界の風雲児は新幹線に乗ってやってきたのでした。
準備していた順番で出ていただいていては、今日中に帰れないかもしれない!?ならば、、、前半松之丞2席、後半奈々福2席に変更。
通常、当日決めることは少なからずあるものですが、プログラムとしてご案内していた内容を変更することは初めてでした。(都合により変更する場合もありますと但し書きを入れておいて正解!)
奈々福さんにはお電話し、松之丞さんにメールし、、、、ほんとにスマートフォンがあるがゆえに、これだけの準備ができます、ありがたや、ありがたや。
さてさて、準備のため、市民ホールへ。
ステージ上では演台を組み立て、高座も設えました。
奈々福さんと豊子師匠は前日の山口市から会場入りされ、さっそくマイクと演台の位置を確認してもらいました。
つづいて、松之丞さん到着。同じく会場をチェックしていただいて、舞台の準備は完了です。
受付でも、チケットもぎる人、アンケート用紙やチラシをお渡しする人、大入り袋を手渡しする人それぞれ配置につきました。駐車場係は光シルバー人材センターのベテランさんでそれぞれの持ち場につきました。
さあ、いよいよ、お客様をお迎えするその時がきました。
今年は、着物をお召しになった方が多くご来場。それもそのはず、山口市や下松市の着物屋さんが「着物でお出かけイベント」を企画してくださいました。おかげで前方は「きものでずらり」!
13時30分、一番太鼓が流れて、開場です。ぞくぞくとお客様がお席につかれます。
13時55分、二番太鼓が流れて、「携帯電話は電源をお切りください」等、ご注意のアナウンス。
そして、予定通り、14時開演。緞帳が上がります。
みんなが待ち望んだ瞬間が始まります。
まずは松之丞さんがご登場。万雷の拍手が起きます。今まで聞いたことがない程の。期待度の「圧」がハンパないって。
自ら「明日の独演会のために、今日中に東京へ帰らないといけないんです」と出順変更をご説明。
今年中に、講談社から絵本が出版されることを紹介しながら、こんな話が絵本には向くのかなと『鼓ヶ滝』。和歌の名人西行法師が立ち寄った滝をみながら作った和歌を老人や子供に駄目だしされ、、、
一旦、袖に戻られ、改めて高座へ上がり2席目へ。落語では『小間物屋政談』というタイトルのはなし『万両婿』。
時には声色も変えながら人物を演じ、物語られていくほどに、お客様が前のめりになって、聴き入っているようです。笑いの多い話なので、その声も次第に大きくなっていきます。
読み終わり、深々と頭を下げる松之丞さんに、さらに大きな拍手がおくられていました。
お仲入りで、浪曲仕様に高座を転換。
演台を飾るテーブル掛けはよく洗った手で扱います。塩瀬という絹の布に直接描かれているのですから。
その間、当初から物販は予定していなかったので、さくさく身支度整える松之丞さん。
休憩時間にスイッチ入れた携帯電話は再び電波オフ!をお願いするアナウンスも流れて、
さあ、後半が始まります。
豊子師匠の三味線で登場する奈々福さん。会場あちこちから「待ってました!」「待ってました!」とお声がかかります。
演台に軽く手をつき、お辞儀をして、顔を上げた奈々福さん、まずは一言
「やつは帰りました」。会場じゅうドッカーンと大うけ。
そのハンサムウーマンっぷりったら!惚れぼれします。
1席目は天下の名工左甚五郎が主人公の物語、「掛川宿」
唸る奈々福さんに、豊子師匠の三味線が後先になりながら、物語が紡がれていきます。どーなるどーなる、ハラハラ、ドキドキ、ワクワク。途中沸き起こる拍手も掛け声もだんだんと大きくなり、物語に引き込まれていっている様子が感じられます。
二人に興味深々!となったお客様も多かったのではないでしょうか。
続く2席目は、お二人の馴れ初めから始まる「豊子と奈々福の浪花節更紗」。
浪曲師の道を歩み始めた奈々福さんが豊子師匠と出会い、どんな修行の日々を送ったのか、ノンフィクションの浪花節。御年80ん歳の豊子師匠の可愛らしさが爆裂!
会場中のお客様みなさん完全ノックアウトされちゃった感ありです。
毎回アンケートは実施していますが、今回は回収率の高い!ありがとうございます。
よーく読ませていただきます。参考にいたします。
多くのお客様が講談も浪曲も初めてだったようですが、存分に楽しめたご様子。
聴いてみたい演者さんを尋ねる項目には、多くの方が「玉川奈々福」「神田松之丞」と書いてくださいました。
奈々福さんはまたお呼びしたいと思いますし、来ていただけると思います。でも、「松之丞」さんは残念ながら、もう無理です。
だって、来年2月には「伯山」を襲名され、「松之丞」さんではなくなるのですから。
「伯山」先生に期待します!
後日談
結局、松之丞さんは当日のうちに東京へ帰り着くことかなわず、翌日も交通機関大混雑のため、独演会は延期になったそうです。
後日談 その2
お客様から感想絵手紙いただきました。
奈々福さんのチャーミングな両えくぼ
こぼれ噺
チケット発売初日に売り切れ、札止めとなった今回。
大入袋を準備しました。といっても正式なものではなく、な~っちゃって大入袋。中身はいつものようにカンロの飴ちゃん。
カンロ飴は光市がふるさとなので。
昨年は公演日前日に札止めとなったため、演者さんにしかお渡しできなかったのですが、今回はなにせ準備時間たっぷり。
とはいうものの、なんか抜けのある私、代表世話人は、肝心なものをもってくるのを忘れていました。それは、なんと「ネタ帳」。今までの公演の記録帳です。
途中、家まで取りに帰る羽目に。
駐車場から車を出そうとすると、仕事熱心なシルバーさんに「ダメダメ」といわれ、事情を話して、しぶしぶゲートを開けてもらいました。
「すぐ戻ってきます!」と言い残して、戻ってくると、またも「ダメダメ」
「ええ~(半泣き、べそべそ表情)お願いします~」と嘆願すると
そのベテランシルバーさん、にやりと笑って、
「大入袋もろーちょるけーね」とゲートを開けてくれたのでした。
「ありがとうございます!」
いや~一時はどうなるかと思いましたが、そんな風に言っていただけて、うれしいです。
任務遂行のシルバーさんのおかげで、スムーズに駐車もできて、気持ちよくお客様も入場いただけたようです。
つくづく、車でご来場の方はそこから「今日の公演」が始まっているのだな~と感じました。
こぼれ噺 その二
前回光がんざき亭は2月でした。
そして、今回約7か月ぶり(!?)令和になって、初開催でした。
久しぶりにお出会いできたご常連さん同士もいらっしゃったり、
大勢様のお運びだったので、思わぬ再会もあったり、
久しぶりのいとこさんやお友達を誘っていらっしゃったり、
光がんざき亭がその出会いのきっかけになっているのでしたら、とてもうれしいことで、本望でもあります。
今回、お運びがかなわなかった方も、また次回、またの機会にお会いしましょう。
いつだって、光がんざき亭はあなたのお運びをお待ちいたしております。